病気又は食中毒…犬が、

旅行中病気になる事がある。
当然どんなに健康な人でも風邪を引いたり怪我をするリスクがある訳であり、それはどんなに注意を払っていても起こる時には起こってしまうものなのかも知れない。
よく「俺は絶対に病気にならないから、大丈夫。」と根拠の無い自信を傲慢に振りかざしている人間もいるが、そういった姿勢は確かに素晴らしいと思うが、いざ風邪をひいた時に風邪をひいていることを否定されるのは少々面倒くさい。
私の身内にもそういうことを言う人がいるが、最近彼はインフルエンザを罹患した。

さて、海外に行くと必ず怪我や病気に気をつけるように諭されるものである。
確かにどんな病気になるか分からないし、最近ではデング熱が日本に上陸したり、ジカ熱の世界的流行が危惧されるようにこれまでとは感染症の範囲が世界的に変化してきているのも事実だ。(エボラ出血熱がひとまず落ち着きつつあるらしいというニュースには少し安心した。)
これから行く予定のタイも外務省の渡航マップを見る限り、ジカ熱が軽いブームのようだ。うん…
かつて南米を回った時、病気を恐れワクチンを打ちたいという気持ちを持ったものの、日本では高額すぎて打てなかった。(日本では黄熱病の注射に約1万円、狂犬病のワクチンは三回だか打つ必要があり、一本1万円以上の高額なものだ…)
誰かのブログかなんかで、コロンビアでは無料で黄熱病ワクチンが打てるとのことを読んだので、南米で打ったら安いのかな?と安易な発想でチリの病院に行った、案の定日本円にしたら約5千円位で打てたのであるが、結局陸路でボリビアに入国するにはそういった証明書を見せる必要が無いので、使わなかったが未だにオレンジ色の10年有効の証明書が引き出しの奥に眠っている。
ワクチンを打っておけばよかったのかも知れないが結局安上がりになったのが、狂犬病ワクチンで実際に噛まれてしまったので、後から打たざるをえなくなった。
チリは野犬がとても多い。道を走っていると一定の間隔毎に犬の礫死体がある。(エクアドルではそれがナマケモノだったりする。)大型犬も多いので、結構怖い。チリに来て1ヶ月くらいした頃にことは起こった。
チリ南部のチロエ島という世界遺産に指定された教会群のある島がある、そこに行った時のことだ。早朝にやって来て特にすることも無いので、街をプラプラと歩いていた。なぜか街中の犬がこちらに反感を持っているようで、全ての犬がこちらに吠え掛かってくるのだ。前日に靴を盗まれ、傷心モードであったので、犬のせいで更に憂鬱感が増していた。
幸いにもその島にはあまり大型の犬がいないので、キャンキャン吠える犬達に囲まれてもそれほどの恐怖は感じない。それでも半日中彼らの集中砲火にあっていると何か自分の方に非があるような気がして来る。日本人が遥々チリのしかも首都からバスで14,5時間もかかる田舎にまで足を運んで世界に拒否される感覚と言うのは結構惨めなもんだ。
事件は起きた。
住宅街を歩いていると突然横から黒い犬が吠えながら出てきて私の左のふくらはぎのあたりに噛み付いたのだ。
驚く私…
ひょえっ、と足を払うとおばさんが箒を持って助けに来てくれた(ように見えた)。何が起こったのかいまいち理解していない私はその箒という道具が犬を追い払うためのものであると認識したのだと思う。箒というものは本質的に善なるものであると思っていたからだろう。何故ならそれは不要なものを適切に排除するために生まれた人類の叡智の結晶であるからだ。
しかし、私は箒の持つ役割を完全に不適切な形で認識していたのだ。
おばさんは私をその箒で追い払ったのだ…


箒が私を追い払いたかったのか、はたまたおばさんが私を追い払いたかったのかは分からないし、それはどちらでも構わないことなのかもしれないが、何れにせよ私は余所者なのだという事をにんしきした。
余計な物、存在してはならない物、不用物、ゴミ。
箒というものはその役割が明確であるがために残酷だ。

その後病院に徒歩で行きワクチンを打つことになるのだが、全て無料であった。計5回であったが、最後の一本はボリビアで打ったが、それも無料。
チリはまだしも(物価は日本と殆ど変わらないと言うのが、私の印象)ボリビア(南米大陸最貧国)でさえもこの様な医療サービスが無料で受けられるというのは目から鱗と言うか、驚きであった。
日本の財源厨の方に調べていただきたいテーマだなと今になって思う。